2019年04月06日
遺言の件数が増加している中,遺言を円滑に執行して相続関係紛争を防止するには,遺言執行者の果たす役目は重要です。他方,遺言執行者の権限や地位については,旧法では争いがあり,明確でない部分もありました。
そこで,遺言執行者の権限については,以下のような改正がなされています。
1 遺言執行者の権限が、「遺言内容の実現のため」であることが明確になりました。
旧法では,1015条は「遺言執行者は,相続人の代理人とみなす」とされていますが,遺言者の意思と相続人の利益とが対立する場面でも,遺言執行者は遺言者の意思を実現するために職務を遂行するべきです。そこで、改正相続法では,遺言執行者の法的地位を明確化するために旧民法1015条の規定を改正し,相続人に効果が生じるという表現に改めました。
2 遺言執行者は、任務開始時に遺言内容を相続人に通知しなければならないことになりました。
相続人は遺言の内容及び遺言執行者の存否については重大な利害関係を有します。相続人の手続保障の観点から相続人が遺言内容を知る手段を確保する必要があります。そこで,上記のような通知義務を課すことにしたのです。
この規律ができたことで,遺言執行者は,任務開始前に,相続人が誰でどこにいるのかといった相続人調査をまず行う必要があります。